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7月20日 H設備の本社ビル ただものではない黒い物体現る

2023-07-20
7月20日 H設備の本社ビル ただものではない黒い物体現る

久しぶりに真剣にデザインと向き合った建物です。2020年2月末を最後に行けなくなったインドネシアのバリ島の日本国総領事館の完成直前以来です
複合用途で、作品に仕上がってくる雰囲気、気配、この感覚は過去に、金万ビル(2014)、ハナ信用金庫(2015)、ユリカビル(2015)を設計した時に経験しました、あの時 以来のもので、今回も同様に複雑な用途の建物でした。
                             https://sogatoru.exblog.jp/23330769/
今回は、1階に駐車場があり、集合住宅の上にテナントがあり、その上に本社ビル、そして最上階にオーナールームという、金万ビル(2014)とほぼ同じ構成の複合用途の建物です。

コロナ禍での3年間、人とのコミュニケーションが取りづらくなり、顔を合わせて酒を酌み交わし打ち合わせをする、本来私が一番得意にしていたスタイルでの設計の進め方がやりづらくなりましたが、ようやくコロナ禍も収束し、傑作を作れる環境が整いました。

この建物は設備工事会社の本社ビルです。設備工事会社の建物をどうデザインしたら良いか?
意匠的(外観的)に設備は常に見えないところに配置されます。
天井裏だったり、パイプスペースだったり、道路から見えない裏側だったり、
とにかく目立たぬように計画されるのが設備です。
常に裏方、脇役的存在です。歌舞伎で言えば黒子です。
目立たない存在ですが、いないと困る重要な存在、役割です。
見えないから手を抜いてもいい理由(わけ)ではありません。
見えないところだからこそしっかりと作り込まないといけません。
そういう実直な性質をデザインにどう反映させるか
それがテーマ、コンセプトです。
過度なお化粧を避けて、素のまま、素材本来の力をそのまま表現する。

「粗にして 野だが 卑ではない」
私が独立開業する時に、ガッツ石松さんより頂いた言葉です。

「おもしろくないもので、おもしろいものを作る」
利休や数寄屋に通じる感性。

全ての外壁面をコンクリート打放し着色仕上げにし、亜鉛メッキの金属をふんだんに使いました。

一瞬パッと見ると、工場か倉庫のような素っ気ない物体に見えます。
しかし、よーく見ているうちに、ただものではないオーラがジワジワと伝わってきます。
重厚感があり絶妙なバランスの取れた建築が出来たと思います。
素材とボリュームだけで表現された、これぞまさにプロ好みの建物ではないかと思います。
一般のお客様では採用するのが難しいデザインです。
同じ職種のお客様だからこそ出来た作品です。

「ディテールに神が宿る」
ミース・ファン・デル・ローエの言う通りです。

遠くから見て、あれ?と不思議な感じがして、距離を変えて近付くと、見えなかったものが見えてくる。
そして緊張感にも似た作り手の魂を感じる。

常に革新への挑戦。それがこの建物のコンセプトです。

7月10日 職場体験

2023-07-10
7月10日 職場体験

今日、中学生が職場体験で来社されました。
2時間という短い時間でしたが、正直、私は感動しました。
14歳の中学生がHPで探して当社を選んでくれて、職場体験を希望してくれました。
若い人達に夢を与えられるような建築設計事務所になれた事が、個人的にとても嬉しい。
独立開業してきて今年で16年になりますが、それなりに知名度が上がってきた証拠です。そして社会に貢献できたという証拠です。

中学生は朝礼からスタートしました。自己紹介から始め、各担当者が今日の業務内容を説明し、意匠について、設備について、さまざまな業務がある事を説明した後、私がマンツーマンで当社の建築設計の仕事内容を説いて、それがいかに社会に奉仕する事なのか、大切な事であるかを教えました。
いろんな業種の、多くの人達が関わって完成する建物。「街」づくり。
安藤忠雄を例にして、建築家は学歴じゃなくて、どれだけ好きになれるか?なれたか?続けてこれたか?で結果が自ずと付いてくる。
初恋に例えてお話ししました。
男性が女性に恋する時、理屈ではなく、本能的に恋に落ちます。
それと同じくらい建築に恋した時、それはあなたの天職になる事でしょう。
中学生はお金儲けに興味があると言ってましたが、職業を選ぶ時、お金儲けが目的なら、設計ではなく不動産屋になった方が良いと教えました。(不動産業者が全員そうではないですが)
思考的に奉仕の精神に欠けると建築設計(特にデザイン)には向きません。仕事ではなく志事である。
同時に幸福はお金では買えない事も教えました。
特に若くして、何かを得ようとするならば、何かを捨てなければいけないのも現実です。

「上手にはすきと器用と功を積む」と、この三つそろふ人ぞよく知る
(利休百首より)

一流になりたいのならば、まず好きになること。
それに器用さと努力が合わさらないと一流にはなれません。
14歳の少年にそれが理解できたのか?不安ですが、スケッチブックに書いてあげてプレゼントしました。
教えている最中、自分が14歳の時どうだったかを忘れてしまうくらい遠い過去の記憶と、今目の前にいる中学生と重なる瞬間があり、「若い人にはもったいない素晴らしく貴重ものが若さ」だと45年前に高校の先生が言ってくれた事を思い出しました。
そして中学生から「若さ」というエネルギーを、もらった気がしました。

4月15日 第56回建築視察会

2023-04-20
4月15日 第56回建築視察会

桜台コートビレッジ 建築家内井昭蔵の設計 1969年完成

私の大好きな内井昭蔵の30才後半(デビュー作の大傑作)の作品です。
ちなみに世田谷美術館を設計した建築家です。

斜面に雁行に建つ集合住宅です。
雁行形状のバルコニーによりプライバシーを確保しています。
なにより、外観にリズム感・躍動感・迫力・変化をもたらしています。
この建築で内井さんは建築学会賞を取りました。
戦後の高度成長期の日本において新しい都市のあり方を示したもので、今でもその力強さを感じさせてくれます。

私も20代に一度見ていますが、あれから40年近くが過ぎて、こうして再度視察すると、正直言って「完敗です」
20代の当時不勉強で、この造形美・ディテールを理解できなかった自分に反省です。
なぜか目地について、目地のあり方について、のみは鮮明に記憶が残っています。
お金をかけなくても目地だけでデザインができる、その程度の自分。 

下記 ウィキペディアより
建築家 内井昭蔵は、1933年に東京の神田でに生まれました。祖父の河村伊蔵と父の内井進も建築家であり、建築一家といえます。

3月18日 第55回建築視察会

2023-03-20
3月18日 第55回建築視察会

熱海 ブルーノタウト設計・渡辺仁設計 旧日向邸見学

コロナ禍の中での改修工事が終了し、本日ようやく見学できました。
自分にとって、すでに4回目となる旧日向邸見学でしたが、今回初めて渡辺仁設計の木造の上屋を拝見できました。
87年前の建物とは思えない斬新なアイデアが盛り込まれていました。
そして、ため息が出るようなデイテールには感服させられます。
建築化照明や床暖房として、床下に温泉のパイプが仕組まれていて温風が出てくる。今の床暖房と考えは同じです。
ひとつひとつのディテールに丁寧に魂が込められていて、それが伝わってきます。
いったいどれだけの時間をかけたのか、気が遠くなる設計期間を感じます。

思考には熟成させる時間が必要です。
今の仕事はとにかく時間がありません。
設計契約すると3カ月後には着工するような切迫した案件ばかりで、まるでデザインがないがしろにされるようで、途方に暮れる毎日です。
この旧日向邸のように現場で職人と一緒に作り上げていくというのが、本来の設計の姿だと真剣に思います。

何回見に来ても、その都度新たな発見があります。
竹の節をうまくピッタリとくっつけて張り合わせている壁には感動します。
イカ釣り漁船を思わせるぶら下がった波打つような電球照明。
タウトらしい 色使い 赤に黒にブルーに。
建築には色が必要だと主張していたタウトならではのデザイン。
階段であって、ベンチでもある段板。踏み幅がひろくて座りやすい。
ここに座って遠くの海を眺めていたのでしょう。
ガイドの方がしきりに「ラインが揃っているので、よく見てください」と言っておられましたが、
私(設計者)からすると当たり前のことが、きっとそう感じられていなかったのでしょう。
言われてみれば?そういうのが随所にあるのがこの建築です。

チバニアンのガイダンス施設

2023-02-18
チバニアンのガイダンス施設が3年後に完成します。
養老渓谷の一部で、観光名所になってる、チバニアンのガイダンス施設の説明会があると聞いて参加しました。
 
今はプレファブ小屋で、スタッフの方から、何度も聞いて教わった地磁気逆転地層の貴重な有難いお話なのですが、今でもよく理解できません。
地磁気逆転があったのは77万年前とのこと。
46億年前に誕生した地球誕生を1歳とすると今99歳くらいの時に地磁気逆転があったのだそうです。
地球がすぐ死ぬという意味ではありません。寿命はよく知りませんが99歳の時に今回の偉業と言える地磁気逆転発見があったという意味です。
設計は隈研吾さんです。
よって完成した暁には名建築の宿命でもある建築学生による見学、展示内容は難しくて理解できないが、建物がいいか悪いか?くらいならば誰にでも理解しやすい。
3年後の完成を目指してこれから設計が開始します。
私の愛してやまない、自分の知っている養老渓谷の環境が壊されないことを祈願するしかない。

さて話は変わりますが、
私の父が亡くなり、ちょうど1年が経ちます。
コロナ禍での最後はとても、無念なものです。 
気持ちの整理がつかないうちに亡くなっていきます。
父の最後(デスマスク)はカッと天井を睨むような死に顔で、おそらく一生、私の目に焼き付いて離れません。
施設にいる時から、病院にいた時も、面会に制限がかけられ、亡くなってから、ようやくじっくり会えるという異常な状態です。
おそらく、数年後、あの時(2022年)は、どうかしてた!と必ず、後悔する日がやってくるに違いない。
父と最後に旅に行ったのが養老渓谷です。2020年の秋のこと。
だから、この1年間ずっと、2回/月くらいのペースで、養老渓谷に通いました。
それが供養のような気がしていました。
父、そして、その二ヶ月後に後を追うように亡くなっていった母への、後悔の念を鎮めるかのように、かつて一緒に旅行に行って見た風景を見ながら、亡くなった両親と心の中で会話をしている。
滝の音、川のせせらぎ、野鳥の鳴き声、カエルの鳴き声、蝉の声、木の葉擦れ音、そのすべてが両親との最後の記憶です。
あまり暗い気持ちを引きずってはいられないし、前を向いて進まないといけないのはわかっている。
早く忘却の彼方へ追いやって、良き思い出のみを自分の記憶にとどめて、自分の残された時間を大切にしないと。
そんな時に、養老渓谷の一部、名所、チバニアンのガイダンス施設の説明会があると聞いて参加しました。
先日見学したクリックフィールドの地中図書館同様、ジオルーフ構造です。
外壁はガラスで、屋根は緩いスロープによる緑化。
地層をイメージするようなデザイン。
隈さんは、屏風ケ浦(銚子)をイメージしたとのこと。
3年後、自分も元気ならばこの目でしっかりと受け止めておきたい。
自然と共生出きる建築が本当に実現できるのか?
永遠のテーマでしょう。

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